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AppEngineで作るComputeEngineの定期バックアップシステム

この記事は、Google Cloud Platform Advent Calenderの21日目の記事です。遅れに遅れてしまい大変申し訳ありません。。。

エントリー時は「Cloud Functionsでなにか」と書いていたのですが、イマイチ目新しい機能も出ておらず良いネタがでなかったので、過去にAppEngineで作ったComputeEngineの定期バックアップシステムの紹介をしたいと思います。

前置きと概要

AWS方面ではわりと早い段階からAPIとタグを駆使したEC2の定期バックアップ手法は有名でした。EC2にバックアップ世代数のタグを設定し、そのタグがついているインスタンスを対象にバックアップを行うバッチを定期で起動します。

blog.suz-lab.com

最近だと、CloudWatch Eventsを利用してEC2要らずで行うことができます。

qiita.com

GCEでの例を見かけなかったのですが、基本的にはGCPスケールメリットを活かすにはステートレスなアプリケーションが前提となるので、そうするとデータを基本的にマネージドなデータストアに入れておけば良い話なので、そういったことは必要ないんだろうなと。

ただ、東京リージョンもオープンしたことですし、これからは社内システムやステートレスではない言ってしまえばレガシーなアプリケーションを移行するようなケースも増えてくるだろうと思いますし、そうなると必要になってくるんだろうなと。

ということで、AppEngineで作ったのですが、これがなかなか良い感じにできました。

EC2における手法の問題点

既知のEC2の手法には問題がいくつかありますが、これらがAppEngineを使うと良い感じに解決できます。

インスタンス数の増大による処理時間の増加

一般的にはそうそう問題とはならないでしょうが、大量のインスタンスを利用する規模の大きい企業や、GCPで代行ビジネスを行ういわゆるMSPのような立場だと、インスタンス数が増えてくると全部深夜のうちに終わらせたいのに終わらない可能性が出てきます。

APIエラー時のリトライ

もちろん確率としては低いですが、失敗することはあります。これも台数が多くなると顕著になってきます。APIのエラーハンドリングをキチンとやればという話ではあるのですが、エラー時にWaitなんかを入れだすとまた上記の話で処理時間が増えていって想定時間内に終わらない可能性が出てきます。

AppEngineでの構成

このような構成になります。公式アイコンが出たのでさっそく使ってみました。

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cloudplatform.googleblog.com

解説

ポイントを解説していきます。

定期実行

AppEngineにはタイマー機能があるので、これを使用します。バッチ処理の実行はキューなどを使っていくらでも冗長性を持たせられますが、発火元の冗長化は自力でやるととてもツラい領域なので、お任せできるのは嬉しいですね。

Scheduling Tasks With Cron for Python  |  App Engine standard environment for Python  |  Google Cloud Platform

分散処理

対象のリストアップとバックアップの実行を分けて、バックアップの実行をTaskQueueに詰めて分散で実行させます。これによって、単一のインスタンスで処理する際の処理時間の問題が解決できます。また、PushQueueを使用するとバックエンドのインスタンスをポーリングさせたり余裕を持って起動しておく必要がなくなるのがとても楽で良いですね。よくあるキューシステムではできない形なので、AppEngineのお気に入り機能の一つです。

自動再実行

TaskQueue (PushQueue)は処理に失敗すると間を置いて再実行をしてくれます。連続で失敗すると再実行間隔も調整しながら実行してくれるので、自力でExponential backoffのような実装をしなくて良いのでとても楽です。

yoshidashingo.hatenablog.com

権限管理が楽

AppEngineというかGCP自体の良さという感じではあるのですが、アカウントを跨いだ権限を与えて複数のアカウントのバックアップを一括で管理したい場合に、AppEngineのアプリケーションに自動で付与されるサービスアカウントのメールアドレスを該当のプロジェクトに招待して権限を付与してあげるだけなのが楽ですし、APIキーの共有などの煩わしさからも開放されるのでとても良い感じです。

まとめ

このような、AppEngineとTaskQueueでタスクの列挙と実行を分散で行う手法は、色々と応用が効きそうです。また、お任せできる領域が多いので、実装や管理が非常に楽になるのも大きなメリットです。AppEngineはWebアプリケーションを乗せるPaaSに留まらない便利なサービスなので、今後も積極的に使っていきたいです。

このシステムは既に私の手を離れており、手元にソースコードが無いのが残念ですが、暇を見つけてまた実装して公開したいなと思います。